2005年08月17日

木目込み人形―ひな菊


20050817e9b9a064.jpg※9 出会い
「強姦されたとよ」
「…強姦て?」
 ほんとうはその言葉の意味を、私は何となくではあったが理解出来た。
 母は私の質問を無視した。
「…地獄だよねー、ウチには父さんが居たからよかったけど」
「父さん、ロスケを追い払うたとね」
「ううん、父さんも恐かったとやろうねー、なにしろ、ロスケは銃を持ってたから。父さんは震えながら、母さんの指輪から時計から全部渡したとよ」
「その時、母さんはどうしとったと?」
「あんたたち子供3人と一緒に屋根裏に隠れとったとよ。その頃、どこの家にも、屋根裏や床下に隠れる所を作ってあったからね」
「ふうーん」
「母さんなら指輪の1つや2つ、下着に隠してでも、ロスケなんかに渡さなかったけど、父さんが、母さんに1つ残らず出せって言うもんだから、全部出してしまったとよ、今考えればほんとに惜しかったよ」
「ふうーん」
「現に、お隣に住んでいた田之上さんのご主人なんか、奥さんの指輪をいくつも内地まで持ち帰ったそうよ。…父さんは正直だったんだね」
「それで無事だったとなら、いいんじゃなかと」
「バカがつくとよ、日本は負けたんだからってばかり言ってさ」
「父さんらしかね」

「…かわいそうに、ミツエさんは、ロスケに家に入り込まれて強姦されたんだよ。それで子供が出来るなんてねー。二重の苦しみだよねえ」
「…じゃあ慎ちゃん、…ソ連人とのあいの子か」
「まあそういうことよ、あの子小さいけど5年生、きっと栄養失調だったんだねえ、かわいそうに」
「慎ちゃん、2〜3年生にしか見えんもんね」※10へ

(写真は、先輩同僚に作ってもらった木目込み人形。古くなって色あせしてしまったが大事に飾っている)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 09:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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