2005年08月21日

童人形


2005082159d05ad3.jpg※11 出会い
 母から、慎ちゃんがソ連人とのあいの子だという経緯を聞いた時、私の心の中に、慈悲のようなある不思議な気持が湧き上がってきて、慎ちゃんに何か手を差しのべたいと、心から思ったのである。

「ただいまー、お腹すいたよー、母さん、何かなかね」と姉2人が次々に帰ってきた。
 母は我に返ったように、やれやれという感じで
「お帰り、お饅頭があるよ、手、洗って食べなさい。真理子もほら、一緒に食べなさい」と言いながら、饅頭を差し出した。そして、「さっさと食べて、宿題しなさいよ」と言いながら、流し台に立ち、洗い物の続きを始めた。

 私は映画館から出てきたような、ぼーっとした感じだった。それでもしっかり饅頭を頬張りながら、2階に上がった。

 再び、子供部屋から外を見ると、慎ちゃんは畑のずっと向こう側の隅っこで、相変わらず、大きな鍬を振り上げている。
 私は、そのうちに慎ちゃんといろいろ話せる時が来るだろう、と思った。

 それからというものは、学校から帰ると、必ず子供部屋から外を見るのが、日課になった。
 たいてい、畑や田んぼの何処かに慎ちゃんの小さな姿を見つけることが出来る。慎ちゃんは何時も秀夫さんと一緒だった。道を歩いているのを見かけることもあったが、その時も、小さな慎ちゃんは、秀雄さんの後をちょこちょこ付いて歩いていた。

 ある日、とうとうその日はやってきた。
 私の家の道路側に面している三崎さんちの畑は、私の家の子供部屋とほぼ同じ高さだった。窓の向こうに直ぐ慎ちゃんがいたのだ。幸いなことに、秀夫さんは遠くの方で後向きで仕事をしていた。
 にわかに私の胸の鼓動が高鳴る。窓を開ける手がブルブル震えた。※12へ

(写真は、男子の童人形、愛子様に似ているようで可愛らしい)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 10:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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