2005年08月25日

服を着替えさせた人形作家の創作人形


200508250858f2b4.jpg※13 出会い
 それからどんどん仲良くなれると思っていたのに、そんな機会はなかなか巡ってこなかった。相変わらず、あちこちで農作業をしている姿を遠くで見ているだけだったのである。

 とうとう、私にとって小学校最後の夏休みに入った。
6年生は私1人だったので、必然的に、部落の子供会のリーダーをしなければならない。夏休みに入るとすぐ、私の家で、夏休みの行事を決めるため子供会を開いた。
 
 小さい部落なので、夜にもかかわらず簡単に集まった。6年生は私1人、5年生が慎ちゃんを含め男子4女子1、4年生男子2女子1、3年生男子2、2年生男子1女子1、1年生男子1と合計14人である。
 夜、子供だけの集まりというので、気分が盛り上がっているのだろう。皆楽しそうである。慎ちゃんは、下級生とワイワイとあまったりふざけたりしている。5年生の男子は、あまりにも子供っぽい慎ちゃんを、誰も相手にしていない。

 昼間、大人と一緒に一生懸命働いているのが不思議なくらい、あどけない笑顔だ。私は、慎ちゃんが普通の子供に戻れるこんな機会が、私の家で持てたことが嬉しかった。

 母が、幾つかの器に盛り分けた駄菓子を出してくれた。
 いっせいに下級生の手が伸びる。
 その時だった。慎ちゃんが、反射的というようなタイミングで「ダメッ!誰もまだ食べていいとは言ってないだろが」とピシッと下級生の1人の手を叩いたのである。
 私はびっくりした。そして、彼は、養護施設や昭夫さんの家や、もしかしたらおばあさんの家でも、許可がないと食べてはいけないと、言われて育ったのだ、と思った。

「慎ちゃん、いいのよ、皆も食べていいよ」と私がなだめるように言うと、下級生は「ほらね」と言うように食べ始めた。
 慎ちゃんも安心したのか「いただきます」とニコニコしながら食べ始めた。
 行儀作法をきちんとしつけられているのが、普通の子と違い、逆に子供らしくないと感じられた出来事だった。

 その会合で決ったラジオ体操に、慎ちゃんは1度も出席することはなかった。朝は牛の世話が忙しく、体操どころじゃないことを、朝の散歩の途中、三崎さんの前を通る父が教えてくれた。
 
 海水浴も山登りも、慎ちゃんは参加しなかった。夏でも農作業は忙しく、田の草を取る慎ちゃんの大きな麦藁帽子や、川に入って牛を洗っている小さな慎ちゃんの姿を、私は遠くから見ていた。※14へ

(写真は、購入していた時着せてあった白い服が色あせたため、私の若い頃の服を解いて作って着せ替えた、創作人形)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 10:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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