2005年08月27日

30年前のぶら下がり人形


200508273cb0b463.jpg※14 出会い
 私の家の前は、国道に直角につながる、車1台やっと通る広さの道路が通っている。国道は南北に伸びており、その国道の東側の小さな集落が私が住んでいる部落である。北へ上ると博多へは、バスなら1時間で行ける。私の家から国道を南へ100m程行くと、三崎さんちの私道が直角に通っており、その道の突き当たりが、全て三崎さんちの屋敷である。私の家からは、三崎さんちの畑を挟んで、真向かいに、その屋敷が見えるのである。

 私はその日、ぼんやりと、外を眺めていた。秋も深まり農家は忙しい時である。6年生にもなると、学校が終わっても誰も外で遊ぶ子供はいない。
 小学校に入るまでは、2軒奥にある家の子で、1つ年下のタヨ子ちゃんと朝から晩まで遊んでいた。その後も下級生の頃までは、何をするにも一緒だった。それが、4年生、5年生になる頃から、お互い夫々学校の友達と遊ぶようになっていき、自然に疎遠になった。今では、近所なのにめったに会うこともない。
 この夏休みに、毎朝ラジオ体操で会えたことや、海水浴に行ったりしたことを、遠い昔のことのように、懐かしく思い出していた。何か、今がほんとうにつまらなく思え、口を尖らせて、窓の敷居に頬杖をして、暇を持て余していた。その時、私の目の中に、慎ちゃんが飛び込んできたのである。

 三崎さんちの屋敷から出てきた慎ちゃんが、足早に国道をこちら側に向かって歩いているのだ。しかも、秀夫さんは居ない。とっさに、私は「行って何か話をしよう」と思った。
 部屋を出て階段を駆け下った。編物をしていた母が「真理子!どうしたの、何処か行くとね」と声をかけた。「うん、タヨちゃんと、ちょっと、すぐ帰るけん」と言い捨てると、台所の裏口から靴をつっかけて、国道へと走った。
 その間、2〜3分もたっていなかったのに、慎ちゃんの姿は既に何処にもなかった。※15へ

(写真は、30年程前おもちゃ屋にぶら下がっていた2〜3千円のぶら下がり人形。捨てがたく未だに大事にしているもの)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 13:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック