2005年09月05日

博多人形(日本人形)


200509055ebc2aef.jpg※18 出会い
 慎ちゃんは1年7組、私は2年1組で、期せずして教室が隣り合わせになった。鉄筋コンクリート3階建ての1階である。教室の片側は南で、ずっと続いているコンクリートの外廊下は、花壇を挟んで運動場に面している。

 私たちのクラスの女子生徒は、休み時間になると、陽当たりのよい窓際に集まって、だべるのが常だった。
 ある日、1年生の男子が、運動場へ出たり、廊下を走り回ったりして、じゃれ合っていた。いつもの事だと、何気なく見過ごしていると、何だか様子がだんだん荒々しくなっていった。皆で1人をいじめている感じなのた。
 もしかすると、と思い注意してよく見ると、やはり、いじめられているのは、慎ちゃんだった。
「返せよ。僕の筆箱、返せよ」
「取れたら返すよ。ほーら、良かとを持っとるやっか」
 真新しいブリキの筆箱を、5〜6人の子がキャッチボールのように投げあっている。慎ちゃんが、取り返そうと必死で追いかけ回しているのだ。

 私とおしゃべりしていた友人も、その様子に気付き、「ほら、見てみなよ、あの子、あいの子だよ、やっぱ、いじめられるんだよね、かわいい顔してるのにね」と面白がっている。
 そんな中で私は止めに入る勇気もなく、一刻も早く休み時間が終わればいいと、願うしかなかった。

 それからしばらくの期間、慎ちゃんは休み時間になると、よくいじめの標的にされていた。それでも、休み時間になると、彼は、半分泣いたような、半分笑ったような顔でいじめられ続けていた。私はその様子を見るにつけ、次第にイライラがつのり、外を見るのを極力避けるようになっていった。

 たまには、廊下ですれ違うこともあったが、私が話しかけようとすると、きまって慎ちゃんは、バツが悪そうに身をかわした。
 学校での私の存在や成績が、自分とはかけ離れているのを知って、彼が私のことを改めて遠くに感じ、萎縮していったのは仕方のないことだった。
 私もそんな彼をこれ以上卑屈にさせてはいけないと、学校ではなるだけ無関心を装おうと、自分に言い聞かせていた。※19へ

(写真は、旅館のロビーに飾ってあった日本人形)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 17:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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