2005年09月09日

アンティークな調度品と花瓶


20050909edcf4a69.jpg※20 出会い
 春になると、私たちは夫々進級した。
 そして、秀夫さんにもやっと春が巡ってくる。お嫁さんがやってきたのだ。三崎さんちはそれまで、なぜか暗いイメージだったが、その頃から徐々に明るくなっていった。畑にも話し声が聞えるようになり、華やかさと活気が出てきた。

 私が、いつものように窓から慎ちゃんを探していると、お嫁さんの方が、いち早く私に気付くのだ。私にとっては、秀夫さんだけでも気兼ねだったのに、手ごわい相手が増えたのだ。慎ちゃんの姿を目で追っている私の心を、見透かされているような気がした。
 女性は女性の気持が敏感に分かるものだと、私は子供心に思ったのである。

 中学3年生の私は、高校受験勉強という大事な時期でもあった。県下有数と言われる県立福岡第一高校を受験すると決めていた私にとって、慎ちゃんのことを考える場合ではなかった。
 とはいえ、机に座っていてもすぐ窓の外を見てしまう私だった。
 そのころ、頻繁に、隣の部落に住む、守山ミツエさんの一人娘のまり子ちゃんが、おばあさんの所へ1人で遊びにきていた。慎ちゃんとは父親違いのきょうだいだ。
 まり子ちゃんは、慎ちゃんとは2つ違い、私とは3つ違いの下級生で、小学校時代からの顔見知りである。年齢の離れた3人のお兄ちゃんの中で、家族皆に可愛がられていた。とてもおしゃまで、色白でポチャッとした、子供なのに妙に色っぽい、可愛らしい子供だった。

 慎ちゃんもまり子ちゃんも、お互いの関係を知っているのか、興味のある所であるが、とにかく、2人はとても仲がよかった。
 2人が楽しそうに話しているのを見ると、私の心の中は穏やかでいられなかった。一方では、彼らはきょうだいだから、特に慎ちゃんにとっては、とても幸せなことなんだと、よく分かっていたのに。※21へ

(写真は、旅館のロビーのコーナーに飾ってあった、調度品と、花瓶)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 10:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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