2005年09月11日

スパニッシュ人形


20050911ee159bac.jpg※21 初恋
 私が初恋を認識したのは、正に同情から愛情に変わっていく高校生時代だったといえる。

 私は県立福岡第一高校2年生になった。次姉妙子は高校を卒業して、東京の食品会社に就職した。東京には母方の叔母の嫁ぎ先があったので、そこに下宿させることで、両親は安心して送り出すことが出来た。長姉は既に博多で独立していたので、私は2階の子供部屋を1人で占領することになった。

 妙子と私は、一緒に勉強し、一緒に寝ていた。お互いに刺激しあって、たまには取っ組み合いの喧嘩をした。私は日頃から早く1人部屋の生活がしたいと願っていた。であるから、さぞかしせいせいするだろうと思っていたのに、妙子がいなくなってからの1週間は、夜になると、妙子の旅立つ時の心細そうな後姿を思い出し、布団の中で泣いた。拭っても拭っても涙が止まらなかった。声を出してワアーワアー泣いた夜もある。自分でも予期せぬ感情だったが、考えてみれば、妙子とはそれ以来一緒に暮らすことはなかったのである。

 薄情なもので、寂しさも日にちが解決してくれた。そうなると、1人部屋は快適そのものだった。机も1つになり、6畳間が広く感じる。掃除もこまめにするようになった。たいてい、日曜日は窓を全部開け広げ、大きな声で歌を歌いながら掃除をした。
 窓の外の畑にいる慎ちゃんにも、もちろん秀夫さん、お嫁さんの松子さんにも歌声は届いているはずだった。
 最初は恥かしく思い、小声で歌っていたが、そのうちにずうずうしくなり、むしろ、慎ちゃんに聞いてもらいたくて歌っていたのかもしれない。意識していたのは間違いなかったから。憧れだった女優の吉永小百合の”寒い朝”をよく歌った。※22へ

(写真は、人形好きの私に、夫がスペイン旅行のお土産に買ってきてくれたもの。だいぶん色あせてきた)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 11:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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