2005年09月29日

福を呼ぶフクロウくん


2005092990891d97.jpg※30 初恋
 そんな高校2年生の夏休み、私の身の上にちょっとした事件が起きた。

 私は、姉の妙子が東京で就職して家を出てからは、2階の子供部屋で1人で寝ていた。最初の頃こそ、夜1人寝るのが恐くて、何度も戸締りを確認するほどだったが、1ヵ月もすると、それも何ともなくなっていたのである。
 それは、8月12日、明日からお盆という日の深夜だった。その夜も暑さにかまけて、つい、網戸だけで寝入ってしまったのだ。2階ということもあり、両親も日頃からあまり注意もしてなかった。田舎ではどの家庭でも、戸締りなどしていなかったのではなかろうか。私は夜中に目など覚めないのに、その時、ふっと目が覚めたのだ。

 足元に、白くぼーっと何かが浮かんでいた。ボンヤリした頭で半身を起こした。そのあと、息が止まるほどびっくりした。
 「キャアーッ」という声は反射的に発せられたが、息を呑んでいるので声にならない。驚くと声は外に出なくて、呑み込むものなのだ。腰が抜けて、身体も動かない。
 「誰!」。人間だと分かった。膝をついた足を後に、布団の隅で中腰になり、ジーッと私を覗いていた。男の子供だ、中学生くらいだととっさに思った。顔が丸くて、目が細くて、色が白かった。きつね顔だと思った。不思議と顔がくっきりと分かったのだ。その日は月夜だったのだ。服装は白のランニングと白のトランクスいわゆる下着姿だった。

 「誰!」ともう1度、言いながら、逃げようとした男の服をとっさに掴んだ。ズルーッとゴムが伸びた。トランクスだったのだ。気持が悪くて手を離さざるを得なかった。その辺はスローモーションだった。その隙に男は窓の方に逃げた。
 「父さんー!父さーん!」とやっと叫ぶことが出来た。 「どうした!真理子」と父が血相を変えて駆けつけた時は、男は窓から飛び出していた。
 「あっち!あっち!男!」と窓の外を指差した。父は階段を駆け下り、外へ飛び出し、追っかけた。
 男は窓から飛び出した後、屋根伝いに小屋の屋根、その先の我が家の細長い庭、そこから国道へ、それは身軽にピョンピョン跳ねて逃げて行った。その男の後姿はまるでウサギかキツネのようだった。
 騒ぎに駆けつけていた母と、「あれ、人間じゃないみたいねー」と、力の抜けた身体と、ドキドキしている胸を抑えながら、茫然と見送っていた。※31へ

(写真は、陶磁器の人形。働いていた頃の職場の幹部の方から頂いたもの。玄関に置き、福が訪れるのを待っているのだが)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 09:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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