2005年10月23日

コーヒー碗皿 


2005102387e2647c.jpg※42 藪椿
 私のOL生活は快適そのものだった。
 仕事を覚えて、一つ一つ達成していくことは私の成長の過程であり、とても楽しく、充実していたのである。
 しかし、ステキな男性からは未だ子供扱いされて、特別に女性として、声をかけられることはなかった。
 この頃、私は、1日が終わるとぐったり疲れて、まっすぐ家に帰る毎日を送っていた。
 
 いつの間にか、4月末になりゴールデンウイークに突入した。
 とたんに私は何もすることもなく、遊ぶ友人もいないことに気付いたのだ。
 世の中は旅行だ、ピクニックだ、スポーツだと騒いでいるのに、私は家の中で暇を持て余していた。こんなに良い天気なのに、こんなに私は若いのに、何もすることないなんて、と情けなく、さわやかな行楽日和が返って恨めしかった。
 
 窓の外に目をやると、こんな日も慎ちゃんはせっせと農作業をしていた。ハッとして、なぜかホッとした。
 彼には連休も何もないのだ、と思うと慎ちゃんのことを急に健気に感じ、愛しい気持が湧き上がってきた。気持が通じたのか、慎ちゃんは手を休めて、私の方をじっと見つめていた。私もじっと見つめ返した。慎ちゃんだと辛うじて分かるくらいの遠い距離なのに、2人は長いこと見つめ合っていたのだ。身も心も潤っていくのが分かった。
 国道の向こうの燃えるような山の緑が、太陽の光にキラキラ輝いているのが、突然私に迫ってきた。眩しかった。5月の空はあくまでも青く空気は澄み切っていた。時折、心地よい風が窓から私の頬を撫でにくる。
 早く夕方にならないかな、と思った。
 砂山で、今日はきっと、慎ちゃんが待っててくれるような気がしたのである。※43へ

(写真は、現川焼、臥牛窯のもの。柄は白鷺)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 10:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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