2005年11月10日

お年玉付き年賀ハガキでゲットしたコーヒーカップ


20051110d083b02c.jpg※51 旅立ち
 慎ちゃんと私は、今では木曜日の週に1度の逢瀬が楽しみになっていた。
 バスの、後から2番目左側の席は、私たちの指定席のようなものだった。
 慎ちゃんは、砂山で私の手を握ってからは、だんだん大胆になっていて、平気で左手を私の腰に廻したりした。私は、一瞬身を硬直させて、手を押しのけたりするが、慎ちゃんをがっかりさせたくないので、たいてい、じっとしていた。私がじっとしていると、慎ちゃんは学生カバンを2人の膝の上にのせ、カバンの下で私の右手を握ってきた。慎ちゃんが、だんだんエスカレートするのがわかり、ハラハラしたが、そのうちに広田のバス停に到着しホッとするのだった。

 広田のバス停では、数人のお客が降りる。その内、1名の人と一緒に200メートルくらい国道を歩くとその人は左折して違う道に入る。途端に慎ちゃんは私にぴったり寄り添ってきて左手を握るのだ。そして、私を引き寄せ手を腰に廻す。
 時々、辺りがパアーと明るく照らし出される。トラックのライトだ。2人はパッと離れるが、その度に、ヒューヒューと口笛を吹かれたり、厭らしい言葉で冷やかされもする。
 私は一瞬現実に戻り、何をしているの?と自分をたしなめるが、またすぐ慎ちゃんが私の腰に手を廻してきても、やはり拒むことは出来なかった。

 そんなことが続いたある木曜日、私たちは初めてキスをした。
 停留所から、私の家に入る道までの間に1箇所、人目に知れないような農道が、路樹がある国道横の土手に沿って通っている。農道と田んぼの間には小川が流れている。その夜は冴え冴えと澄み渡った蒼い月の夜だった。2人の目の中に、まるで白いじゅうたんが敷き詰められているように、月光にクッキリと照らし出された農道が迫ってきたのである。
 昼間の土のデコボコ道は消え失せ、辺りはまるで2次元のように神秘的な世界だった。小川の水面が蒼く透きとおり、せせらぎが月光にキラキラ反射している。
 
 身体を寄せ合っていた2人は、本当に吸い込まれるように、その白いじゅうたんの道に入ってしまったのである。2人はカバンとバッグを下に置くのももどかしく、土手を背に強く抱き合った。そして唇を求め合った。お互いに初めてなのに、こんなに自然に抱き合えるのが、不思議だった。

「慎ちゃんの唇は柔らかいね」と言うと、「唇では百姓はせんけんね」と言って、私を両手で抱きかかえるようにしてまたキスをした。慎ちゃんの唇は、男の人とは思えないようにふんわりとして、まるで桜の花びらのようだった。
「真理ちゃんの髪はしなやかで、いい匂いがする」と、慎ちゃんはお返しのように言いながら、大きな手で私の髪を撫でたり梳いたりした。私は猫のように首をすくめていた。
 そして、何回も何回も深く熱いキスを繰り返しているうちに、私たちは何年も前から愛し合っていたようにお互いに求め合い、私は彼の腕の中で蜜のようにとろけていったのである。
 私はこの夜、きっと蒼い光線の魔法にかかったのだと思った。52へ

(写真は、お年玉付き年賀ハガキのクジで4等のふるさと便に当たり、もらったもの)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 10:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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