2005年11月14日

かわいい絵柄のコーヒーカップ


20051114bee70e2c.jpg※53 旅立ち
 いつの間にか私は20歳になっていた。
 世の中は東京オリンピックで沸きかえっていた。

 その頃から私は毎日、漠然とした不安にかられるようになった。それは、まるで暗闇の海へ小船を漕ぎ出すような、頼りなさだった。
 慎ちゃんがますます好きになっているのに、一方では憂鬱でたまらなかったのだ。
 これから一体私はどうなるの?どうしたらいいの?と考えれば考えるほど、目の前にモヤがかかり前が見えない。どんなに良い方に考えても、慎ちゃんと一緒にいる未来は見えてこないのだ。
 慎ちゃんは、私が仕事を辞め、親を捨ててでも自分と一緒に東京に着いてくると、本気で思っているみたいだった。手紙の交換で何度もそのことが書いてある。
 私は、彼の一途さに途方もなく恐くなることがあった。
 最後には、何もかもめんどうになり、まだ先のことだ、考えるのはよそうと、結局はそこで終わってしまう。

 そんな時慎ちゃんが、彼が施設から引き取られた後、小学校1年生から小学4年生まで育った博多の昭夫さんの所へ、1ヵ月間手伝いに行くことになったのである。
 昭夫さんの奥さんがお産するため、下の子どもたちの世話と家事の手伝いが必要ということらしい。他人を雇うより、何でも出来て気心が知れている慎ちゃんに白羽の矢がたったことは当然のなりゆきだった。その間慎ちゃんは昭夫さんの家から、夜学に通うことになった。
 彼は、私と会えないのが寂しいと言い、私の職場に手紙を出したいと言った。言われるまま、私は住所と、電話番号を教えた。

 慎ちゃんとしばらく会えないのを寂しいと思う反面、私は内心なぜかホッとした。慎ちゃんとコソコソ会う緊迫感と、その後、親に対した時の怯える気持ちに、その頃、私はほとほと疲れきっていたのだ。
 これから1ヵ月はのびのび生活が出来ると、久しぶりに開放された気持になり心が安らいだのである。※54へ

(写真は、いただきものだが絵柄がかわいいので)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)

posted by hidamari at 11:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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