2005年11月16日

草花の寄せ活け


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 それから私は毎日を、溌剌と過ごすことが出来た。父と母とも落ち着いて話が出来た。夜、慎ちゃんと手紙を交換することもないので、時間を気にせず、オリンピック競技のテレビ中継を、家族で楽しむことも出来る。結婚した姉、京子には男の赤ちゃんが出来ており、既に1歳になっていた。土曜日には家族で泊まって行くこともあり、甥を含めて家族団らんが何より楽しかった。この何気ない平和な生活が愛しかった。
 やはり慎ちゃんと付き合うのは、私にとっては不幸なのだと思えるのだった。
 ふっと、今職場で、私に、結婚を前提に交際しようと言ってくれている住田さんのことを考えていた。彼となら、私が結婚すると言っても、父は反対しないだろうと、ぼんやりと考えた。
 恋愛と結婚は別なのだと考えたのだ。
 彼は博多の人で、私より8歳年上、東京の有名私大出身、長身でがっちりした体格の持ち主である。顔はポチャッとした丸顔で眼鏡をかけている。決してハンサムとはいえないが、インテリジェンス漂う人なのだ。難点といえば、母子家庭で一人っ子ということだろう。男性として結婚適齢期なのか、恋愛感情を無視して結婚を切望している人なのだ。

 でも、私がどうしても誘いに応じきれないのは、何も彼が親1人、子1人だからということではなかった。
 彼に相対すると、私はどうしても気後れしてしまい、萎縮してしまうことだった。
 グループで冬の登山をした時のことだった。
 昼食時のこと、私が悴んだ手で缶詰を食べようとしていると、「美味しそうだな、僕にもくれ」と住田さんが声をかけてきた。私は反射的に「はい」と自分が食べていたものを、そのまま渡してしまった。

 「それ君の食べかけだろう?新しいのを取って」
 その時反射的に彼から発せられたことばだった。
 さも汚さそうにそう言われたことは、彼に少しばかり気を許していた私にとって、とてもショックなことだった。彼が私を傷つけるつもりでないことは、よく分かっていた。なぜならそれは彼本来の姿だったからだ。

 私は、自分の軽はずみな行動が恥かしくて、しばらく固まってしまった。
「夜はガウンを着て、ワインを飲むんだ」という何気なく話した彼の家庭での様子も、なぜか耳から離れない。
 そんなことを思い起こしていると、私の未来に住田さんの姿も見えなかった。
 住田さんは私にはやはり遠い存在だった。55へ

(写真は、料理教室の食卓に飾ってあったもの)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)

posted by hidamari at 09:46| Comment(0) | TrackBack(1) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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Tracked: 2005-11-16 10:02