2005年12月02日

高価なリンゴ


高価なリンゴ.jpg※62 旅立ち
 クリスマスイブがやってきた。
 その日、父と母には、会社の若い人たちが集まって、クリスマス食事会をするのだと言った。母は「行っといで、いいね、若い人たちは」と口では羨ましがったが、娘の私が楽しむのを優しく見守ってくれていた。それだけに、嘘をついている自分がみすぼらしく思え、居たたまれなかった。

 イブにふさわしく寒い夜だったが、教会の中は暖房のせいもあるが皆の熱気でポカポカと暖かい。
 クリスチャンでなくとも十分厳かな気持になれた.ミサの内容も何となくわかったし、讃美歌も親しみのあるものばかりだった。
“きよしこの夜”“諸人こぞりて”等、パイプオルガンの素朴な音色に合わせて歌う歌は、心に沁み渡った。皆に合わせて私も歌った。なぜか心が落ち着き、清々しい気持にさせられる。私は一夜だけの敬虔な信者になっていた。
 ミサが終わり、慎ちゃんと私は、神聖な場所での荘厳な気持をひきずったまま外に出た。ずっと無口だった。でも、なんともいえず気持ちよかった。
 帰りのバスの中で、慎ちゃんは私の手をしっかり握りしめ「誰にも祝福されなくてもいいけん、2人だけでも、教会できっと結婚式をあげようね」とポツリと言った。
 私はさすがに返事が出来なかった。胸が締め付けられるような痛さを感じていた。私は慎ちゃんを騙しているのだろうか?マリア様へのお祈りは何だったのだろうか?※63へ

(写真は、リンゴの木のオーナーになり育ててもらったという高価なリンゴ。1個600円。頂き物)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
posted by hidamari at 09:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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