2005年12月06日

ホテルの階段踊り場の飾りつけ


ホテルの階段踊り場の飾りつけ.jpg※64 旅立ち
 私は現に、今、慎ちゃんと付き合っているのだから、自分が処女であるなどと厚かましいことは決して思っていないが、世間で言う最後の一線だけは守っていた。
 慎ちゃんが熱情のあまり、いずれ結婚するんだから……と言って迫ってきた時、私は、もし赤ちゃんが出来たら今私たちに育てられるの?と言って、かたくなに彼を制したのである。
 慎ちゃんは、時代に翻弄され、その残酷な出生の十字架を背負わされている、いたいけない犠牲者である。私のこの言葉を、誰よりも重く受け止めることが出来た。
 それっきり、最後の一線だけは、自ら優しい気持で守ってくれているのだ。

 でも、その夜、私は自信がなかった。というより覚悟が出来ていたというべきだろう。
 慎ちゃんと来春は別れる決心をしている私は、彼に私の誠意を示したかった。
 慎ちゃんのこと、ホントに愛しているんだよ、身体をはって愛してるんだよ、ということを示しておく必要があると考えたのだ。
 でも、それは、彼のためだけではなかった。私自身のためでもあった。そういう確かな区切りをつけなければ、絶対別れられないような気がしていた。
 別れるために、私の全てを慎ちゃんに捧げよう、と決心した。しかし、それはずるずると引きずらないで1回だけにしようとも思った。そうすれば、きっと、私の中では初恋の良い思いでとして、永遠に残るだろうと考えたのだ。

 どんなに愛し合っていても所詮彼は、春になると東京へいってしまう。そうすると、彼との仲は自然消滅するのではないかという不安を、心の何処かにいつも抱えていた。 そんなあやふやな立場で物理的に離れて暮らすことは、私にはやはり出来ない相談だった。
 別れは私からというのは、そんな私の悲しい意地と打算だった。※65へ

(写真は、忘年会が行われたホテルにて、撮ったもの)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)

posted by hidamari at 08:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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