2005年12月28日

高速を走りながら撮った由布岳


高速を走りながら撮った由布岳.jpg※75 旅立ち
 慎ちゃんの手紙は後の方に行くに従ってことばが過激になっている。死ぬの殺すのというのは小説の中の話だと思っていた。
 私は、慎ちゃんは決して本意ではないと思った。
 手紙を書いているうちに気持が高ぶり、言葉だけがだんだんエスカレートしていったのだと思った。温厚で思慮深い慎ちゃんがそんなことをするはずがないと思ったのだ。
 それなのに、もう1人の私は、
「真理子、それは虫のいい考えだよ、あんたは慎ちゃんを甘く見てはいないかい、慎ちゃんの言うとおりだよ、今まで慎ちゃんのこと、さんざん振り回しておきながら、今になってバイバイじゃ、誰だって怒るよ。特に慎ちゃんは愛に飢えているのだから、想いは人1倍だと思うよ、自殺でもされたらどうするの?」と、それ見たことかと言わんばかりに私に耳打ちする。
 でも、私は冷静だった。
 ―もし、逆の立場で、私の方が慎ちゃんから別れを切り出されたら、私も、死ぬの殺すのということばだって口にするかもしれない。
 慎ちゃんは今、頭に血が上っていて、自分を見失っているだけだ。時間がたって冷静になれば、私のことをきっと許してくれる、絶対分かってくれるよ。だって、慎ちゃんはまだ20歳だよ。仕事も大学も決っているのに失恋したぐらいでそれをパーにするなんて、バカげているよ。それに今からいくらだってステキな女性とも出会えるし。そんなことよく考えれば分かることだよ。―と思えるのだ。
 そう考えると、いくらか気分が楽になった。
 明日になったら、慎ちゃんはきっと落ち着くだろう。
 一方で、明日もまた、朝、国道で慎ちゃんは私を待っているだろうなあ、と思った。
 しかし私は、どんなことがあっても、もう後戻りはしないつもりだった。
 私だけのためではなく、慎ちゃんにとってもその方がいいのだと言い聞かせていた。76へ

(写真は、別府方面から湯布院に向かう車の中から撮った写真。湯布院と由布岳はゆの字が違う)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)

posted by hidamari at 10:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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