2006年01月04日

佐賀の名山―天山


佐賀 天山.jpg※78 旅立ち
 慎ちゃんと私の家がある集落は国道の東側に位置していて、広田バス停と竹の下バス停のほぼ中央にある。慎ちゃんは私が洋裁学校へ通う前までは、バス停は博多寄りの竹の下を利用していた。
 私が洋裁学校に通うようになり、一緒のバスで帰るようになった時から、彼は私に合わせて広田バス停を利用するようになっていた。
 
 その夜、慎ちゃんは私を置いて、竹の下バス停で降りていった。
 夜道の1人歩きは危険だとあれほど心配してくれたことは一体何だったのだろう。
 私は、バッグと洋裁道具の袋と汚い大風呂敷の包みを持って、泣きたい気持を抑えながら、とぼとぼと暗い夜道を、1人で帰った。
 11月30日闇夜、身も心も凍えるような寒さと、恐さと、心細さが身体全体に染み渡り、ただ惨めだった。

 家に着いてもこの大風呂敷包みの処置に困った。
 2階の私の部屋まで運ぶのには、居間を通り抜けなければならない。そこには必ず母がテレビを観ているのだ。
 ひとまず小屋に隠しておいて、母が寝静まった頃、おもむろに2階に運んだ。
 慎ちゃんから今までにもらった、50通くらいの手紙の束は、蒲団を入れる押入れの天井裏にずっと隠している。
 私はその夜、慎ちゃんからつき返された私が書いた手紙を、風呂敷包みごとそこに押し込んだ。

 その後、その2人分の手紙の山を、父や母に分からないように、風呂のカマドの中で燃すのは、大変な苦労だったのだ。慎ちゃんの証明書用のかわいらしい写真を燃すのはもったいないような気がしたが、私も彼に見習って、慎ちゃんにまつわるものは何一つ残さず、すっきりと処分したのである。79へ

(写真は、年末、高速を走りながら車の中から撮った天山。スキー場もある山の頂きには雪が積もっている)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)
 

posted by hidamari at 11:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック