2006年01月06日

葉ボタンのオブジェ


川登SA.jpg※79 旅立ち
 12月になると、会社を定時に終えて急いで帰っても、家に着く頃は、廻りはすっかり夕闇が迫っている。
 自分の部屋に入ってすぐ窓の外を見るくせは相変わらず続いていた。
 これは、子供の頃からやっていたことではあるが、慎ちゃんと親しくなってからは、彼を探すのが習慣になっていた。
 慎ちゃんは夜学に通っているので、私が会社から帰る頃は居ないと分かっていたが、やはり目は何となく彼がいつも働いている田んぼや畑にいくのだ。
 窓からは、慎ちゃんの家、その家に続く敷地内の道に大きな柿の木がたっているのも見える。
 慎ちゃんは、その柿の木の下に立ち、よく私の部屋の方を長い間じっと見ていた。
 夕闇の中、柿の木の下にぼんやりと人影らしき物が見え、ドキッとした。単に藁か薪を立て掛けてあるだけだろう。慎ちゃんであるはずがなかった。

 昼間は職場の喧騒の中で慎ちゃんのことはあまり思い出さないが、夕方になると急に心の中にぽっかり穴が開いたような寂しさが、怒涛のように押し寄せてくる。それに月の生理が半月以上遅れているのが、心細さと不安を掻き立てていた。
 でも、その日、午後から下腹が差し込み、独特の不快感があった。これはいつも体験する生理の前兆だった。そして、その夜、生理がやってきた。心の奥底で慎ちゃんの子供が欲しいと、とんでもない思いもないではなかったが、いつもは憂鬱な生理の到来が、何より嬉しく有難く思え、神に感謝したのである。80へ

(写真は、高速SA川登の池にあったもの)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)

posted by hidamari at 11:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック