2006年01月12日

お正月用―和リース


正月用 和の飾り物.jpg※82 旅立ち
 3月になると、こげ茶色だった田園風景が息吹き始めた。この間まで枯れ木同然の梅ノ木が2月に突然蕾をつけ花が咲いたと思ったら、今では花も散り、若葉が茂り始めた。畑の枯れ草の間からは新しい緑の草がニョキニョキ芽を出している。山々も若葉色に変わりつつある。ウグイスもあちこちでさえずり始めた。
 眠っていた世界が目を覚まし、いっせいに躍動を始めたのだ。

 私は、忙しい毎日を送っていた。私の仕事は取引先に対する売上を部門毎、月毎に出し、その動向と推移をデータ―にすることだ。決算を前に見込みを作らなければならない。毎日残業だった。帰宅する時は夜中の11時をまわっていることも度々だった。
 家には寝るために帰るだけの生活だったが、それは私にとってとても好都合だった。慎ちゃんのことを思い出す暇がなかったのだ。帰宅するとお風呂に入るのがやっとで、泥のように眠りにつく毎日だった。
 そんな時、係長に呼び出され、
「本田君、君には4月から、本社で開かれている、支店長・部長会議に出席してもらうから」と言われた。
 この会議は東京本社で毎月行われているもので、支店長、部課長はもちろん出席するが、その他に、担当者が係り毎に何人か選ばれて出席するのだ。総務はめったにお呼びがかからないが、今回、私も4年目に入るし、仕事も認められたのかもしれなかった。
 私が出席出来るとは思ってもいないことだった。それだけに嬉しかった。慎ちゃんのことがすぐ頭に浮かんだ。東京で会えるかも、とふと思った。でもすぐ、―そんなことはもうあり得ないのだ、慎ちゃんとは別れたのだし、こんな報告さえ今では出来ないのだから― と思うと、むしょうに慎ちゃんが恋しかった。慎ちゃんに会いたかった。83へ

(写真は、呉服屋さんに頂いた縮緬で作ってある和のリース)
(上記小説は、カテゴリー小説[藪椿]で連載中)

posted by hidamari at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 [藪椿] | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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