2006年01月28日

 赤い実ともみの木の活け花


赤いタ.jpg短編小説〔茜雲〕 ※1
 晴美は短大を卒業したばかりの20歳、この4月から市立の総合病院に事務員として採用された。
 晴美はもともと市役所に勤めるつもりで行政職の採用試験を受け、難関を突破して合格している。当然市役所勤務だと思っていたのだ。ところが配属されたのが、市の外れにある総合病院だった。病院に勤務している人たちが市の職員であるなどと、晴美は考えていなかった。辞令が交付されて始めて、なるほど、市職には市立病院の業務もあるのだと認識したくらいだった。

 働き初めて1ヶ月が経とうとしているのに、晴美はなかなか病院勤務に慣れない。というよりふつふつとした不満を心に抱いていたので、なかなか気分が晴れず、自ら、殻に閉じこもってしまっていた。
 病院は、小高い丘の上にある。
 広大な敷地なので、バス停は病院前となっていても、そこから病院の玄関入口まで、歩いて5分はかかる。毎朝、バスを降りた所から、勾配のある道を病院の玄関まで歩くのが苦痛だった。坂道が辛いというのではない。今日1日また、あの一種独特な雰囲気の事務所で過ごさなければならないのが、たまらなく憂鬱だった。
 病院勤務がたとえ不満でも、仕事に没頭出来れば、こんなに毎日の出勤が苦にならないだろう。
 しかし、1ヶ月が過ぎようとしているのに、晴美は決った仕事が与えられなかった。先輩たちの補助的なことばかりをやらされていたのだ。そのことも晴美を悩ませていた。ー私はこの職場に必要ないのではーとさえ思い始めていた。
 1日を何とか過ごし、就業時間が終る5時半になると、逃げるように事務所を出て、晴美は、今このバス停でぼんやりとバスを待っていた。※2へ

(写真は、ホテルの食堂に飾ってあったもの)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 14:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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