2006年01月30日

リトルエンジェル


エンジェル.jpg※2
 その時だった。病院の方から250CCのバイクがけたたましく走ってきて、晴美の前を通り過ぎて行った。晴美は目で追った。キューッとそのバイクが急停車した。 晴美が茫然としていると、啓介がヘルメットを持ち上げ、晴美を振り返った。
 啓介は病院のレントゲン技師で、26歳、晴美とはもちろん病院内で面識があった。啓介の顔をマジマジと見たことはないが、小顔で細面、睫毛の長いくっきりとした黒目がキラキラと光っていて、いかにも育ちがいいという感じがするがどこかに精悍さもあり、いわゆるハンサムだと、晴美は認識していた。
 その啓介が笑顔で話しかけてきた。白い歯もきれいだった。
「川口さん、ウチ何処?送るから乗らない?」
 晴美は突然の出来事に、考える余裕がなかった。
 反射的に「いいえ、けっこうです。バスもうきますから」と答えた。
「そうか、じゃー」と、また勢いよくエンジンをとどろかせて走り去った。晴美は、あっという間に終わってしまった会話を頭の中で復唱していた。
 ―バイクの後は気持ちよさそう、乗ればよかったかなあ―という思いが沸いてきたが、後の祭りだったが。

 東元啓介が大分出身でこの小川市には単身で住んでいるということを、事務所の先輩佳代が言っていたのを晴美は覚えていた。
 独身の啓介がこんなに早く帰宅するとは考えられなかった。これから何処へいくのだろうと、取り留めのないことに思いを巡らせていると、晴美の乗るバスが、目の前で停まった。バスに乗り込むと同時に啓介のことも頭から離れていった。※3へ

(写真は、若月まりこさんの人形。プレゼント用に購入したついでに自分用も購入したもの)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 10:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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