2006年02月01日

ホウレンソウ


ウ.jpg※3
 明日からゴールデンウイークという週末の金曜日、勤務を終えた晴美は、暗い心でバス停へ向かって病院の坂道を降りていた。
 連休といって、何ら楽しい計画もないこともあるが、それ以上に、職場で自分の置かれた状況が不安定のまま休みに突入するのが、晴美の心を重くしていた。
 連休が明けたら、思い切って係長へ「ちゃんとした仕事をさせて下さい」と直訴するしかない、と心に決め自分に言い聞かせながら歩いていた。
 そんな考え事をしながら歩く姿は、誰が見てもあまりかっこいいことはなかった。
 そんな晴美の横に、スーッと後からきたバイクが停まった。
啓介だった。
「ヨオッ、ボーッと歩いてちゃ危ないぞ!」
「アアッびっくりした!すみません」晴美はぴょこんと頭を下げた。
「これからまっすぐ家へ帰るの?」
「は、はい、…まあ」
「後、乗りなよ、ハイ、このヘルメット付けて」と、バイクの前にかけていた赤いヘルメットを渡した。
「えっ、でも」
「いいから、早く乗って!またがっていいから」
「は、はい、すみません」晴美は、―ま、いいかーと思った。
「しっかり俺に掴まって。……ところでウチは何処?」
「鶴崎です」
「そうか、じゃあ遠回りだけど、海岸を走るから」
 啓介はそう言うと、エンジンをかけ、いきなりぶんぶんバイクを飛ばし、海岸線の道へ入って行った。晴美はこの道があることは知っていたが、通ったことのない道だった。
バイクの後に乗るというのは、晴美にとって初めての経験だ。恐くて啓介の腰に手を廻してしがみつくしかなかった。晴美は後悔していた。振り落とされるのじゃないかと思った。こんなに恐い目に合うなら、ゆっくりバスで帰る方がどんなにいいか。しかし、今は目を瞑っておとなしく啓介にしがみついた。※4へ

(写真は、プランターで育てたもの)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)
posted by hidamari at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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