2006年02月11日

冬の幼稚園


銀杏の木.jpg※8
 4月29日から始まったゴールデンウィークは5月5日まで飛び石無しの連休だった。
 晴美は、まさか、病院のテニスコートに行くことになろうとは、4日までは指の先ほども考えていなかった。ところが5日の朝、父親と母親が、どこか出かけるなら鍵はちゃんとかけるんだよ、と言い残して親戚の法事に出掛けた時、頭の片隅にインプットされていた啓介のことばが突然蘇ってきたのだ。
―今日は5日だ、東元さんが確かテニスをするっていう日だ、見にいこう― そう決めると、矢も楯もたまらなかった。すぐさま洋服を着替えると家を飛び出していた。
 晴美自身がテニスをしたいわけでは決してなかった。むしろ、絶対したくなかった。晴美は運動オンチということを、イヤというほど自覚していたのだ。
 ただ、休暇中ということもあり、晴美はジーパンとスニーカーというカジュアルなスタイルである。テニスをしにきた、と勘違いされはしないか、少し心配だった。
 病院のテニスコートに着いた時は、お昼前11時頃だった。
 テニスコートは2面あり、1面には内科医師の姿が見えるのでそのグループであろう。
 もう1面が、東元のグループだろうか、男女混合ダブルスを実戦しているようだった。東元はそこでジャッジをしていた。
 2人の女性のテニスウエアも本格的で、チームワークよく楽しそうにプレーしているのを目の当たりにした時、晴美は、場違いな所へ来たことを既に後悔していた。
 晴美は気付かれないように、身を隠した。幸いコートのまわりには高い金網が張ってあり、ところどころに桜の木が植わっていた。すぐに気付かれることはないだろう。晴美は様子をちょっと見て、そのまま帰ろうと思った。bXへ

(写真は、散歩道にある幼稚園。庭のセンダンの木)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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