2006年02月13日

椿の花


椿の花.jpg※9
          ※
 啓介はネットの横でスコアを取りながらも、心はうわの空だった。ラリーが途切れるとコートの入口の方へ目が行く。
 晴美がはっきり今日ここへ来ると言った訳ではないが、時間が経つにつれ、胸の鼓動が激しくなりどうにも落ち着かないのだ。

 啓介には4年ほど付き合っている栗山田鶴子という24歳のれっきとした彼女がいる。病院内でも、仲間内はもちろん、事務関係の人は概ね周知のことだった。
 それなのに、ある日、事務所のデスクに不安そうに座っている晴美を一目見た、正にその瞬間に、不思議な感情が湧いてきたのである。
 何処かで会ったことがあるような、懐かしい、心の奥からじわっと温かかくなる感情だった。しかも、啓介は ー俺の好みだー と直感した。決して美人ではないのにとにかく惹き付ける何かがあった。
 しかし、その後、どうして彼女がこんなに気になるのか、よく考えると、7歳で死に別れた啓介の実母の面影に重なり合うことに気がついた。 
 啓介は両親とも教師の元に生まれたが、父親は啓介が生まれて間もなく、突然病で亡くなっている。その後教師をしながら啓介を育てていた母も、啓介が小学校に入ってすぐの頃、ガンで亡くなってしまった。
 啓介はその後、母の姉である伯母に育てられたのである。伯母は若い頃は銀行に勤めていたが、妹が亡くなると同時に銀行を辞め、比較的自由のきく保険の外交員をしながら、ずっと独身を通して、啓介に愛情を注いできた。啓介は、伯母を慕い愛していたが、実母のことを片時も忘れることはなかった。※10へ

(写真は、可憐な藪椿の花。町外れに行くと道路脇の山肌のあちこちに見ることが出来る)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 21:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも楽しみに読ませていただいております。
ところで母の姉になるおばでしたら、伯母の表記になるのではないでしょうか。
細かくてすみません。
Posted by もみじ at 2006年02月15日 12:28
もみじさんへ
 
 ご指摘有難うございました。
 訂正させて頂きます。
 今後ともよろしくお願い致します。
Posted by hidamari at 2006年02月16日 11:58
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