2006年02月15日

夏みかん


夏みかん.jpg※10
 5歳違いの伯母と実母は、小さい頃から仲の良い2人きりの姉妹だった。しかし、性格も容姿もあまり似ていなかった。伯母はいわゆる美形で性格もてきぱきとした勝気なのに対して、実母は若い頃の美空ひばりみたいな穏やかな顔立ちで、性格もおっとりしたおとなしい人だった。
 啓介が小学校へ入学する時、既に入院していた実母と、病院で撮ったランドセルをしょった啓介との2ショット写真を、啓介はずっと持ち歩いていたが、最近になって写真があまりにもボロボロになったのでアルバムに移したところだった。
 今では実母の顔をはっきり思い出せないが、アルバムの中には、いろいろな表情の母がにこやかに微笑んでいるので、頭の中にはいつも写真の中の母がいたのだ。
 啓介は晴美を見て懐かしく感じたのは、晴美が実母の面差しにどことなく似たところがあったからに間違いなかった。
 啓介が田鶴子と知り合ったのは、福岡の医療専門学校レントゲン科を卒業後、小川市立病院に就職し、この町に住んですぐだった。
 啓介のマンションの近くにある食堂に手伝いにきていた、食堂の親戚の娘だった。昼間は市役所にアルバイトに行っているが、夕方手伝いにきていたのである。毎日のように夕食をそこで済ませていた啓介に、なにくれとなく世話をしてくれた田鶴子と、いつの間にかそういう関係になっていった。
 その田鶴子が、この連休は、市役所の仲間と北海道旅行に行くというので、その間に晴美をテニスに誘ったことを、啓介は、どこか後ろめたく感じるのを、自分でも不思議に思うのだった。啓介がダブルスを組むパートナーはだいたい田鶴子というのは仲間は全部知っていたことだった。

 啓介は、金網ごしに晴美がこちらを覗っている姿を目にした。鼓動がますます激しくなった。きりがいい所で迎えに行こうと思った矢先だった。見ると晴美が後向きになって帰っていくではないか。
「ごめん、ちょっと、タイム」
 あわてた啓介は、コートの4人に言い残して、晴美を追いかけた。※11へ

(散歩道にある、夏みかんのある家と畑)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 12:16| Comment(1) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。
この度は、「日本女性が元気になると日本は変わる」に貴重な一票を投票してくださり、
誠にありがとうございました!
とても嬉しかったです!
おかげさまで、総合一位を取ることができました。
ご協力してくださったhidamariさんに出会えましたこと、感謝しております!
私は、パソコン歴が浅く、ブログはまだやっておりませんが、時々訪問させていただきます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
Posted by ひまわり at 2006年02月16日 02:30
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