2006年02月17日

博多人形の絵はがき


博多人形.jpg※11
          ※
 「川口さーん」と啓介が追いかけてくるのが分かった時、晴美は、―しまった、見つかっていたのか―と思った。帰ろうとしている所を呼び止められたのが、うっとうしかったのだ。が、それを振り切って帰ってしまうのはいかにも大人気ないことだった。
 真っ白い半袖のポロシャツと濃紺の短パンが眩しいほど似合っている啓介が、少し息を弾ませながら、晴美に近づいてきた。
「来たんだろう?せっかく来たのに何処へ行くの?入っておいでよ」と晴美の肩に手を廻した。
 晴美は、啓介の何気ないスキンシップに戸惑った。
 ―仕方ない、たとえ形だけでも、見学するしかない―と観念せざるを得なかった。
「すみません、じゃあちょっと見学させて下さい」と啓介の手をすり抜け、「どうぞ、早く行って!私も行きますから」と一歩離れた。
 啓介は「来るんだよ」と念をおすと、大股でコートへ帰っていった。
 晴美は啓介の後をゆるゆると歩いて付いていった。そしてコートの側に設置してあるベンチにスーッと腰を下ろした。啓介はネットの横に再び立ち、「ごめん、再会しまーす」とジャッジを続けた。
 ダブルスを組んでプレーをしているのは、啓介の後輩でレントゲン技師の矢部と准看護師の麻美ペアー、薬剤師の蒲田と薬局で事務をしている慶子ペアーだった。
 病院に勤めて1ヵ月、4人とも晴美は面識があった。蒲田が1人妻帯者で40歳近い年齢だろう。慶子は28歳位、麻美は22〜23位だろうと思った。
 矢部は年齢が晴美と同じ20歳ということもあり、よく事務所にきては晴美にちょっかいをかけてきていた男性だった。
 その矢部が、啓介が連れてきた女性が晴美だと分かると、ニヤニヤ意味ありげに笑っている。晴美は何となくバツ悪く、会釈しながら手を振った。※12へ

(写真は、川崎幸子作の博多人形の写真の絵はがき)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)
posted by hidamari at 21:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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