2006年02月26日

川の中の鯉


川の中の鯉.jpg※15
 中村は「窓口の受付は大丈夫か」と佳代に念をおしながら、会議室に入ってきた。
「ええ、大丈夫です、秋津さんがちゃんとやってくれてますから」と佳代が応えた。
 秋津フサエは嘱託職員で56才という年齢にも関わらず、10年以上勤務している病院の主の様な存在だった。意地悪な姑のように振舞う秋津を、晴美は最初から苦手としていた。
 「そうか、じゃあさっそく始めよう」と中村は、佳代と晴美を前に対面側に座った。
「実は、藤田さんは妊娠6ヶ月なんだよ、遅かれ早かれ産休に入るんだ、そこでだ、藤田さんがやっている業務をこれからは全面的に川口さんにやってもらいたい。藤田さんが産休に入るまでに仕事を教えてもらって完全に覚えて下さい」
「ホントは1日も早く譲りたかったんだけど、いきなりじゃかわいそうだと思ってたの。川口さんならすぐ覚えられるよ。今までにも手伝ってもらっているし、川口さん、飲み込み早いもん」
 晴美は佳代が妊娠しているのではないかと薄々感じていたことだった。しかし、産休に入るまでは通常通り仕事をするものだとばかり思っていたのだ。
「ええ、それはいいのですが、藤田さんはそれでは毎日暇なんじゃないですか?」と晴美が言うと、
「それはいいのよ、雑用はたくさんあるし、私ちゃんとやるから。川口さん頑張ってね、私がいる間はちゃんとフォローするから心配しないで」と、佳代は肩の荷を降ろしたように、晴々としている。
 しばらく雑談をした後、
「それじゃ、そういうことでいいね、後は2人で引継ぎをやってくれたまえ」と言って、中村は会議室を出て行った。※16へ

(写真は、川で放し飼いにされている鯉の群れ)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 12:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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