2006年03月02日

布で作ったミニおひな様


絹の布で作ったミニおひな様.jpg※17
        ※
 啓介は、今夜も田鶴子が部屋で待っているだろうと思った。田鶴子とはそういう仲だった。合鍵も渡してあるので自由に部屋へ出入りはしているが、2人の暗黙の了解で、いつの頃からか金曜日の夜だけを一緒に過ごすようになっていた。田鶴子は泊まっていくこともあるし、夜遅く帰ることもあった。
 田鶴子は書道教室を開いている母親と弟の3人暮らしである。父親は田鶴子が高校生の時に亡くなっているが、会社勤めをしていた父親の退職金と年金、生命保険等遺産が多額にあったため、家族はそれなりに暮らしをたてていた。
 啓介は田鶴子の家にも出入りをしていた。母親も啓介を気に入っていて全幅の信頼を寄せている。1日も早く2人が結婚することを望んでいるが口に出すことはなく、若い2人を温かく見守っているだけだった。
 啓介は、田鶴子が自分と結婚したがっていることも、母親もそれを望んでいることも分かっていた。いつかはそうすることになるだろうと思っている。むしろ、今の田鶴子との倦怠感を打破するのは、結婚するのが一番いいと考えていた。
 ただ、啓介には結婚資金がないのだ。月々給料天引きで預金しているが、それは微々たるものでまだまだである。夏冬のボーナスが頼りなのだが、それを預金に廻すことがなかなか出来なかった。籍だけ入れて田鶴子の家に曲がりする方法もあった。田鶴子の家は昔からの大きな持ち家なので、可能なことだった。しかし、それは啓介の母親が許さないだろう。

 啓介は、晴美に −明日、テニスの練習に来いよー と言ったが、田鶴子が、晴美の突然の出現をどういう風に感じるだろうかと、不安になる気持ちを禁じえなかった。田鶴子は人一倍嫉妬心の強いことを啓介はよく知っているからだった。※18へ

(写真は、友人から頂いた手作りおひな様。絹の布で出来ている。細かい作業に感心する作品)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 11:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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