2006年03月06日

陶器のミニおひな様


陶器のミニおひな様.jpg※19
          ※
 土曜日の朝、晴美はいつも通り目が覚めた。
 学生時代から、休みの日となると、通常は、身体がリラックスモードに入り9時過ぎにならないと絶対目が覚めない。それなのに、時計を見るとまだ6時前だった。

 ―イヤだなあ、やはりラケットのことが気になって目が覚めたんだ、もったいない―
 と思い、晴美は再度目を瞑った。
 しかし、―ラケットを返すために、今日、もう1度テニスコートに行かなきゃ― という思いが頭をもたげて、もはや眠りにつくことは出来なかった。
 それでも9時頃まで、布団の中で目を瞑ったまま時間を費やした。いつもより時間が遅く流れる。ゆっくり、食事をし、外出する準備をしてもまだ10時だった。

 ラケットは、もちろん1度も振ることもなく、それどころか、ケースを開けることもなく玄関に置きっぱなしにされていた。
 母親から「このラケット、じゃまだから自分の部屋に持っていきなさい」と、しつこく言われていたのを、すぐ返す物だからと無視していた。
 啓介にさっさと返して、早くすっきりしたいと思った。
 ちょっと早すぎるとは思ったが、晴美は10時を過ぎると待ちきれずに、「このラケットを返しに行ってくるから」と母親に言い残して、家を飛び出した。

 休日の病院は、入院患者を見舞う客が時折訪ねてくるくらいでひっそり静まりかえっている。玄関前を通り過ぎ、裏側にあるコート場に着いた頃は5月とはいえ、太陽の光線は充分汗ばむ程の力強さだった。
 この紫外線の降り注ぐ中で、テニスなんか出来やしない、と晴美は改めて思った。
 コートでは、啓介、田鶴子のペアー、蒲田と慶子のペアーが麻美のジャッジの元でプレーをしていた。ベンチには矢部が1人ポツンと座っている。
 晴美は田鶴子の存在にすぐ気が付いた。初めて見る女性だった。病院関係の人ではない。花が咲いているようにそこだけ輝いて見えた。
−彼女こそ、啓介の恋人に違いないー と確信するものがあった。
 晴美は恐れていたものが現実になったことを悟った。
 身体からヘナヘナと力が抜けていくのを感じていた。※20へ

(写真は、団地内の奥様が自宅販売しておられるものを購入した、テレビの上に飾れる小さな物)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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