2006年03月12日

裸の街路樹


運動公園の周りの街路樹.jpg※22
 啓介は少しびっくりしていた。
「えっ、何だって?」
 目を見開いて、立ち上がった。手を腰に当て、口を斜めに尖らせて晴美をじっと見つめたが、顔をちょっと横に向けて目をそらした。
 不快感が現れていた。
 何より証拠に、別に引き止める言葉も言わず、ニコリともしなかった。
―この間教えたのは何だったんだ、最初から言えよー と思っているだろうなあと、晴美は申訳なさで一杯だった。

「そおっ、でもラケットは君にあげた物だから、持って帰っていいよ」と、啓介は差し出されたラケットを受け取ろうとしなかった。
「いえっ、する気ないのに、持っていても仕方ないし……もったいないから。どうもすみません、有難うございました」
 晴美はベンチの上にラケットを置いた。
「じゃあー私これで……、失礼します」
 両足を揃えて、晴美はいんぎんに頭を下げた。
「さよなら」と、啓介と田鶴子が期せずして同時に声を発した。
 晴美はこちらを覗っている矢部に、じゃあ、と軽く手を振ると、早足でコート場を後にした。
 遊んで行けばと、矢部ぐらいは言ってくれるかなあと思ったが、じゃあな、と言ったきりだった。
 ―何をがっかりしているのよ、当然のことじゃない、私はこのグループには、もともと何の関係もない人間だったのだからー と晴美は自分に言い聞かせ、気持ちをリセットさせた。
 晴れやかな気持ちが甦ってきた晴美は、もう啓介のことは何も気にするまいと、青空を見上げて深呼吸しながら誓ったのである。※23へ

(写真は、運動公園の周りの街路樹。秋には紅葉が美しいが今はまだ、寒々としている)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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