2006年03月20日

赤いガラス花瓶


赤いガラスの花瓶.jpg※26
 翌日、さらなる情報を仕入れた秋津は、昼休みになると、待ち構えたようにサトミの話題を持ち出した。
「平川さん、仕事辞めたいって、稲田さんに言ったらしいよ」
「えっ、それで辞めるの?」と、佳代も関心を隠さない。
「ううん、稲田さんが止めたらしい」
「やっぱ、居辛いのかしら」
「そうじゃないのよ、彼女、精神的に参っているんじゃないの?捨てられたっていう心の傷が深いんだと思う」
「そりゃそうだよねえ」
「でもね、仕事辞めてどうするのよ。……看護師の仕事っていっても、一度辞めたらおしまいでしょう、ここだと公務員でしょ、恵まれているわ、個人病院があるっていっても待遇うんと落ちると思うのよ。だから、もったいないって稲田さんが説得したらしい。……不倫の果ての騒動なら、諭旨免職ってこともあり得るのに」
「諭旨免職って、自分で自発的に辞めなさいって諭すことですよね」と晴美は誰に言うでもなく呟いた。
「そう」
「そんな場合、相手の男はどうなるんですか?」
「そうね、まず、ならないわね、だって看護師の代わりはいるのよ、医者ってそうそうすぐには見つからないし、慰謝料を払えば終わりって感じね」
「医者じゃない場合は」と晴美は納得がいかなかった。
「ケースバイケースじゃないの?まあ、クビとまではいかなくても何らかの処分があるんじゃないの?降格とか」と秋津も改めて考えているのか、首を傾げながら答えた。
 佳代がウフフと笑いながら
「とにかく、平川さんだって時間が解決してくれるわよ、そのうちにケロッとしてまた次の恋愛をするんじゃないの?」と、言った。
 そうよ、そのとおり、と言いながら秋津は、それはそうと、というような顔をして晴美を見た。
 晴美は―来た来た、また、何か説教されるな―、といういやな予感がした。※27へ

(写真は、若葉色のフキノトウに合う赤いガラス花瓶)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 14:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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