2006年04月03日

桜道―B


B.jpg※33
      ※
 晴美は、どうしよう、と思った。
 啓介が自分を誘うのは、田鶴子が留守であることに違いなかった。啓介自身そのことを隠しもしないし、紛れもない事実なのだ。
 それってホントに平気なことなのか?
 もし自分が田鶴子の立場なら、きっと嫌な気持ちがするだろう。きっと、誘った男性より応じる女性を憎むだろう。

「何、考えているの?僕の彼女のこと……?」
 啓介が察するように問いかけてきた。
「だって、私やっぱ行けません」
「彼女とのことは僕の問題だから、君が気にすることはないから」
「……」
「とにかく、明日迎えに行くよ。それまでに考えといて」
 啓介はそういうと、脱いだスニーカーに脱いだ靴下を突っ込み平らな岩に置いた。そして、ジーパンの裾を手早く撒くると、砂浜に降り、波打ち際を歩き出した。
「君も入れよ。靴はそこに置いてて。あの岩の所まで行ってみよう」と500m位先に見える岩の丘を指差した。
 晴美は頷くと、啓介と同じように脱いだソックスをパンプスに入れ、啓介のスニーカーの横に、揃えて置いた。
 靴を並べて置いただけで、田鶴子に対して何だか申訳ないような、また2足並べられた靴を見て、恥かしいような妙な気持ちがした。
 それなのに、何でもないように澄ました顔で、べージュ色のズボンのすそを捲り、啓介の後を付いて水の中を歩いた。
 波が戻るたびに足の下の砂も戻り、感触が気持ちいい。不思議なことに楽しい気分がフツフツと湧き出るのを抑えることが出来ない。
 しばらく1列で歩いていくと
「手を繋ごうか?」と啓介が振り返り、いきなり晴美の手を掴んだ。※34へ

(写真は、桜道のパートB)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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