2006年04月15日

らんらんバス


らんらんバス.jpg※39
 晴美は啓介と2人だけの海水浴がどんなものになるか、一方ではとても不安だった。2人でどんな会話をするのか、海で2人だけで果たしてどんな楽しみ方があるのか、ただ、泳いでいるだけで楽しいのか、見当がつかなかった。
 しかし、その不安はすぐ吹っ飛んだ。
 2人で海へ入り、水をかけ合うだけで、可笑しくてたまらなかった。口が閉まらないほど笑い続けた。
 何でもないことがどうしてこんなに可笑しいのだろう。 不思議だった。
 啓介はビーチボールを持ってきていた。
 晴美を迎えにくる前に街で買ってきたという。
 海の中で2人がバレーボールを始めると、周りにいた子供たちが次々に寄ってきた。たちまち10人くらいの輪が出来た。そのうちに2組に別れてゲームをしようということになった。子供たちと一緒になり、真剣に遊びに興じている啓介は、いつもの落ち着いた大人の男性ではなく、少年のようにあどけなく目が輝いていた。
 晴美は啓介の新鮮な一面を見て、ますます好きになっていくのを感じていた。

 2人はその日、時の経つのも忘れて、心から楽しんだのである。
 最後に一泳ぎしようということになり、2人は少し沖まで出た。
 そこで仲良く並んで1000メートル程、クロールをした。
 午後6時のチャイムがどこからともなく聞えてきた。
 町内放送だろう。子供たちも帰り出した。
 何時の間に置いたのか、啓介が日陰から、仕出し弁当とお茶を岩場へ持ってきて広げた。
 「お腹空いたろう?夕食までの繋ぎだ、食べよう」と言った。
 ビーチボールと一緒に、街で調達してきたとのことだった。
 晴美が、お腹空いたなあ、と思ったところだった。
 啓介のフットワークのよさに、ただ恐縮するだけだった。
 そして、田鶴子に対して、「今日半日本当にありがとう」と、心の中でお礼を言った。
 啓介に優しくされる度に、彼女に申訳ないとチクチク胸が痛むのを、禁じえなかったのである。※40へ

(写真は、今日、働いていた頃の職場の友人と食事会に行った際、乗った市内らんらんバス。何処まで乗っても百円均一。観光地巡り用)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中) 

posted by hidamari at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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