2006年04月21日

色とりどりの久留米つつじ


色とりどりの久留米つつじ.jpg※42
 もともと看護師は、芸事が達者な人達ばかりである。
 職員演芸祭は、彼女達が趣味として習練している、日本舞踊、フラダンス、社交ダンス、コーラス、カラオケ等の日頃の練習成果を発表する絶好の場だともいえるのだ。
 どの演目をとっても、びっくりするほど上手かった。
 忙しい業務に明け暮れながらも、看護師が、これほどパワフルな活動をしていることに、晴美は羨望と驚きを隠しえなかった。
 患者たちも、うっとりとし、ほんとうに楽しそうに見入っていた。

 女性出演者が多いプログラム中で、管理部蒲田の歌は、男性ということもあり、誰もが注目していた。
 曲目はオフコースの“さよなら”という‘70年代のヒット曲である。古い曲とはいえ晴美もラジオ等で何度も聞いたことがあった。聞くたびに心に響き、とても好きな曲だった。

 蒲田たちの歌は、趣向をこらしたものだった。
 病院にピアノがあったことも晴美は知らないことだったが、幕が開くとピアノがデーンと置いてあり、応援として参加しているのか、出だしが、啓介の音楽仲間のピアノソロから始まった。
 聴きなれた曲の生演奏は、鳥肌がたつほど、心を打つものだった。そこに啓介のギターが加わり、メインの蒲田の歌、そしてピアノ奏者、ギター奏者の啓介たち2人がハーモニーを付けた。
 ところが、しばらく歌った所で蒲田のメロディーの声が聞えなくなった。歌詞もスムーズに出てこない。あわてて歌ったまではよかったが、今度は音程が外れている。
 蒲田は、緊張のあまり完全にパニックに陥ったのだ。
 選曲は蒲田がしたと慶子が言っていたところをみると、練習不足としかいいようのない出来の悪さだった……、と晴美は正直思ったのである。※43へ

(写真は、長串山の久留米つつじの一部)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)
posted by hidamari at 21:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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