2006年04月23日

久留米つつじB


久留米つつじB.jpg※43
 蒲田が気の毒だった。
 前もって伴奏と合わせることもしていなかったのではないだろうか?
 伴奏の方が目立っていたし、演奏だけで十分だった。歌を付けるなら啓介とピアノ奏者の2人だけのハーモニーでよかったのでは、と思ったほどだった。
 観客全てがそう思ったに違いない。
 ただ管理部の出し物ということで、管理部代表の蒲田がメインでなければならなかったのだ。
 横に座っている慶子はどう思っているのだろうか?
 晴美は慶子に
「ねえ、蒲田さん相当上がってらっしゃいますよねえ、普段はもっとお上手なんでしょう?」と聞いてみた。
 誰よりもうっとり聴き入っていた慶子は、晴美のことばを聞いていなかった。
「ステキだわぁー、蒲田さんがこんなに上手だとは思わなかったわぁ」と、両手を胸に当て本当に、感激しているのである。
「えっ!蒲田さん、上手って!上がってらっしゃるじゃないですか?」と言っても、
「ううん、そんなことはないわ、ステキだわぁー」としきりに褒めまくるだけなのだ。
 晴美は、どう考えても慶子の蒲田に対する思い込みは変だと思った。
 蒲田たちの番が終わり、幕が下りた。
 すると、慶子は
「控え室に行ってみましょうよ、感激だわぁ」と言い終わらないうちに、晴美のことは無視して1人でさっさと、控え室の方へ歩いていった。慶子は全く1人の世界で、それはまるで夢遊病者のようだった。
 蒲田本人に、賞賛のことばを言うために行ったのだろう。
 晴美はその時、もしかすると慶子は、蒲田のことを好きなのかもしれない、と思ったのだった。※44へ

(写真は、天国があるとするとこんな所かな、と思うほど別世界を感じさせた花の中)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 11:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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