2006年04月25日

米軍基地の正面入口


米軍基地正面入口.jpg※44
 佳代は、出産を終えたものの、引き続き育児休暇に入った。1年間は職場に復帰することはない。晴美はそれを知りがっかりしていた。まだまだ、佳代からは教わりたいことばかりだったからだ。
 晴美は、これといって習い事をするでもなく、ただ家と職場を往復するだけのたんたんとした、寂しい毎日を過ごしていた。

 そんな10月のある朝、いつもの時間に出勤した晴美は、事務室に入った瞬間、ただならぬ部屋の空気を感じ取った。
 いつもは始業時ぎりぎりにしか出勤しない事務局長がすでに、応接ソファーに座っている。
 その前に、遠目にも美人と分かるスラリとしたご婦人が沈痛な面持ちで座っていた。
 課長、係長も神妙な顔で事務局長の横に座り、ひそひそと話をしている。
 何かのっぴきならぬ問題が持ち上がっていることが、その様子を見ただけで、晴美にも察しがついた。

 応接台には書類や、出勤簿が雑然と置いてあるが、お茶がまだ出ていない。
 職員に出す前にお客さんにもお茶を出すべきだろう、と晴美は、手早くお茶の準備をした。
 そこへ、机の上の雑巾がけをしていた秋津が、晴美の側へ近づいてきた。
「大変なことが起きたのよ」
「えっ、ホントですか、何が…」
「あなた、知ってた?薬局の蒲田さんと慶子さんが昨日、一昨日とお休みだったこと」
「ええ、何か薬局で、2人一緒に休まれると困るとは言ってたようだけど」
「それがねぇ、あの2人出来てたらしいのよ。それでこともあろうに駆け落ちしたらしいの」
 演芸祭以来、2人の仲が怪しいのではないかと、晴美も薄々は感じていたが、まさか駆け落ちまで発展するとは思ってもいなかった。
 ショックで足が震えるほどだった。
「……あの方、蒲田さんの奥様?」
「そういうわけ」
「でもまだ、家出して2日目でしょう?そんなに大げさにしない方が…ねえ」
 「それが…、書き置きがあったらしいよ。申し訳ないが探さないでくれって」
「そうなんですか、……何それって感じですよね」
 晴美は、言い知れぬ憤りがこみあげてくるのを感じていた。※45へ

(写真は、米国海軍佐世保基地正面入口。黄金色の鳥居と旧日本海軍の旭日旗を表した看板と、後は錨)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 14:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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