2006年04月29日

明日を開く創造の乙女


明日を開く創造の乙女.jpg※46
 ある日の午後、蒲田の妻が子供3人を連れて、病院の事務室に挨拶に現れた。
 小学校6年生を頭に3人の男の子は、両親に似て一際可愛らしく聡明な顔をしていた。しかも、剣道を習っているというだけあって、とても礼儀正しいのだ。それがいじらしく見え、さらに大人たちの涙を誘った。
 
 ―蒲田さんて、何て馬鹿なの?こんなにかわいい子が3人もいるというのに、しかも、慶子さんに勝るとも劣らない美人の奥様なのに―
 ―きっと、慶子さんの色香に誘惑されたのよ。そういえば慶子さんは足首がきゅっとしまっていたし、立派なバストとヒップ、腰は細かったしねぇ―
 ―でもあんなに大人しくて虫も殺さぬ顔をしてたのに、恐いわねぇ― 
 というのが、病院内の職員大方の見解だった。
 晴美もほぼ同じ意見だったが、蒲田の優柔不断さが1番罪なことだと、彼の誰に対しても見せる優しい物腰を思い出していた。

 3人の子供たちは、たまたま事務室に入ってきた啓介を見るなり、「あっ、東元のお兄ちゃん!」と言って、啓介に飛びついてきた。
 啓介は一瞬照れくさそうにしていたが、すぐに子供たちの肩を、両脇に優しく引き寄せた。
 そして、きまり悪そうに「こんにちは」と蒲田の妻に頭を下げた。
 きっと、家族ぐるみの付き合いをしているのだろう。
 啓介が2人の仲を知らなかったはずはない。
 彼は、蒲田の暴走を止め得なかったことに対して、この家族に、少なからず申訳ない気持ちを持っているに違いない。
 晴美はそう思いながら傍観していた。※47へ

(写真は、運動公園競技場の正面玄関に設置されているもの。北村西望作)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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