2006年05月11日

A牡丹


A牡丹.jpg※51
 啓介は、田鶴子もまた、蒲田と慶子の失踪のことで、心を痛めていることは分かっていた。
 啓介と同じように、テニスを通して、2人とは仲良くしていたのだ。
「蒲田さんがあんな人とは知らなかったよ、啓介は私を裏切ることはしないよね」と、事ある毎に念をおすようになった。
 俺を信用しろよ、と応えるしかない。事実、蒲田のような生き方はまっぴらだと、啓介は思っているのだ。
 とは言え、一方では晴美が好きでたまらない。この感情はどうすることも出来なかった。
 しかし、1人を選ばなければいけないルールがある限り、晴美を諦めざるをえないのだ。
 晴美とは出会うのが遅すぎた。田鶴子より早く出会っていたら、確実に結ばれているだろう、と啓介は最近、そんなことばかり思っている。
 
 海水浴以後、晴美は、自分に近寄ってくることは決してしないが、声をかければいつでも手が届く位置にいる、 自惚れかもしれないが、啓介はそんな自信があった。
 それが分かっているので、近寄れずにいるのが返っていいのだと、今は思っている。
 晴美のためにも大人の自分が身を引いていなければならないのだ。
 職場では仕事仲間として、プライベートの時間が持てたら、常に兄のような気持ちに徹するしかないと、啓介は既に、心に深く決めたことだった。※52へ

(写真は、図書館玄関に咲いていた牡丹)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 21:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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