2006年05月21日

街路樹―メタセコイヤ


街路樹 メタセコイヤ.jpg※56
 晴美が4月にこの病院に勤め出してから、まだ1年も経っていないのに病院ではいろいろな出来事があった。病院はさながら社会の縮図で、日頃巷でも日常茶飯事繰り広げられていることかもしれない。
 とはいえ、晴美にとっては急に大人になったような目まぐるしさだった。
 レントゲン技師助手の矢部は、午後になり仕事が一段落すると、相変わらず、晴美の横に来てちょっかいを出してくる。
「この病院の職員はいったいどうなってるの?ねえ、川口さん、まともなのは俺らくらいだよなぁ」
「えっ!また、何かあったの?」
「何かって、森だよ、森」
「看護師の……」
「そう」
「森さんがどうかした?」
「まあ、たいしたことじゃないんだけどさ、……森、最近テニスさぼってばっかいるんだ。彼女が付き合っている男、フリーターっていう奴で、家にしょっちゅういるらしいんだ、TVゲームばかりして」
「同棲しているの?」
「うん、……それはいいんだけど、森、そいつに振り回されているんだよ。ヒモのくせにやきもち焼きときているし、暴力も振るうらしいから、テニスやってる場合じゃないって言うんだ」
「本人がそう言ったの?」
「あいつ、何も言わないけど俺分かっちゃうんだ!最近、化粧もしてないだろう?」
「あら、そうだった?……森さん綺麗だから化粧しなくても全然変わらないけど」
「まあな、おまえとは違うからな。でも、女も化粧しなくなったらおしまいだよ」
「どうせ私は化粧しないと見られませんよだ。……ふうーん、矢部さん森さんのこと好きなんだ」
 矢部は、えへへそんなことないって、と笑いながら立ち去っていった。※57へ

(写真は、運動公園前の街路樹。この間まで枯れ木どうぜんの裸の木が、いつの間にか若葉が青々と茂り生まれ変わった。高さは10mはある。秋の紅葉が1番きれい)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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