2006年05月25日

鏡山(唐津市)


鏡山(唐津市).jpg※58
 宴会は夜の6時半から行われた。総勢60名余りが旅館の大広間にお膳を前に、縦に2人向い合せで4列に並んだ様子は圧巻である。
 バスの中にいた人数より多く感じるのは、院長が公用車で来たのを始め若干の人がマイカーを使用したからだろう。
 男性人は早々と温泉につかったらしく、皆同じ浴衣に身を包んでいる。女性人も半分くらいは浴衣に着替えていた。さすがに晴美たち若い女性は、浴衣姿はくつろぎ過ぎで恥かしいと洋服のままであった。

 院長の挨拶、乾杯の音頭で宴会は始まった。
 晴美は、その間もずっと啓介が何処にいるのか気にかかり、彼の姿を探していた。その広い浴衣姿の背中は、晴美からは遥か彼方の席だった。しかも、晴美とは同じ方向を向いて座っているので、啓介が振り向かない限り顔を合わせることは出来ないのだ。
 晴美は、楽しさがいきなり半減した気がした。席順はくじ引きだったのだ。
 しかしそれにもかかわらず、晴美の右横には、何と矢部がニヤニヤして陣取っている。
「川口さんとは、縁があるんだね、こんなにたくさんいるのに、横に座れるんだから」と言いながらも、目はアチコチよその席を物色している様子である。
 彼も、もしかしたら看護師の麻美の姿を探しているのだろうか。しかし、麻美の姿はバスの中でも見かけていない。彼女はきっとこの忘年会に参加していないのだろう、と晴美は思った
 しかし、そのことには触れず、
「ホントね、よろしく」と応えた。仕方ない、覚悟を決めてこの席で楽しくやるしかない、そのためには矢部とも進んで話そうと、思ったのである。
 左横は若い看護師、前はやはり年配の看護師である。矢部を除いて日頃あまり喋ったことがない人たちに囲まれていたが、珍しさも加わって、それなりに話は弾んだ。
 それに、矢部はギャグを言って周りの人を笑わせるのが得意なのだ。自然にその場が明るくなり盛り上がる。
 晴美は、横に気安く話せる矢部がいてくれて、ホントに助かったと思っていた。※59へ

(写真は、唐津城から撮った鏡山)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 21:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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