2006年06月07日

B花菖蒲


B花菖蒲.jpg※64
       ※
 ―ふられたんだ―晴美は全身から力が抜けていくのを感じていた。張りつめていた心が、プツンと音をたてて崩れ落ちた。
 しかし、心のどこかで、もしかしたらチャクメロが聞えていないのかもしれない、と思おうとしている。そう思うと絶対そうだと思えてきた。何度も何度もコールした。時間をおいてまた何度もコールしていた。
 我に返ると―私はいったい何をしているのだろう、これではまるでストーカーだわ―と、情けなさと恥かしさが、波のようにおしよせてきた。
 東元さんは、私のこと何とも思っていないのだと、再認識するしかなかった。
 明日は何でもなかったように、明るい笑顔で「昨晩何度も電話したんですよ。電話、出なかったですねぇ」と言おうと思った。
 もともと、晴美にとって、啓介は他人の恋人、どうなるものではないと分かりきっていたことだった。
 旅先で、ちょっとお酒を飲んでいたせいで、自分を忘れてしまい、アバンチュールな行動を取ったまでのこと。何も大意はなかったのだ。
 後悔することも落ち込むことも止めよう、青春の苦い思い出として、晴美は心の中にしっかりと受け止めようと思ったのである。※65へ

(写真は、城跡公園の花菖蒲)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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