2006年06月11日

'06 カシワアジサイ


’06.06 カシワアジサイの花.jpg※66
 異動が決ってから4月までの1週間、晴美は毎日残業をした。
 発つ鳥後を濁さず、という言葉がある。晴美は次の人が困らないように、本来4月になってするべき事務もかたづけてしまうほど、事務引継ぎをきっちりやった。晴美の後任は40代の女性ということだった。
 病院全体で送別会をするという習慣はなかったが、事務局では、中村と晴美の送別会が開かれた。
 やっと病院全体のしくみや、職員の顔を覚えた所だった晴美にとって、いざ転勤となると、嬉しいと思う反面、寂しい気持ちもあった。
 転勤の辞令をもらった後、晴美は、医師、看護師等会う人毎に、転勤の挨拶をした。誰も彼も、「おめでとう、ご苦労さんでした」と、言ってくれる。晴美は改めて、晴れがましく、また、皆と別れることに一抹の寂しさも感じるのだった。
 仕事の合間に息抜きにくる矢部は、
「知らなかったなあ、川口さんが転勤を希望してたなんて…、俺を見捨てて行っちゃうんだね」と、軽口をたたく。
「別に希望してたわけじゃないよ、……ただ、採用される時、英語を生かせる仕事がしたいと申し出てはいたけどね」
「…すっごい!おまえ、英語喋れるのかよ、聞いてねえぞ」
「それほどでもないけどね」と応えながら、こうして気軽に話せる友人ができた病院勤務もけっこう楽しかったことを噛みしめていた。

 楽しかったもう1つの大きな理由は、啓介の存在であった。
 しかし、啓介との別れを考える時、悲しいという気持ちよりホッとする気持ちを、より大きく感じていた。そのことは、晴美自身心からホッとしたことだった。※67へ

(写真は、今年咲いたカシワアジサイ。昨年一回り大きな鉢に植え替えたもの)
(上記小説は、カテゴリー短編小説[茜雲]で連載中)

posted by hidamari at 17:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔茜雲〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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