2006年07月21日

天海僧正の銅像


天海僧正の銅像.jpg10
 マロニエの駐車場で車に乗り込むと、茂は遙に、マンションまで送ってくれるように頼んだ。肩を抱いて駐車場へ来る間に、2人の心はますます接近していた。このまま最後まで行ってしまおうかと考えないこともなかった。が、やはりそれは気が引けた。あまりにも早すぎる。ものには順序があるのだ。茂は今夜のところはこのまま帰ろうと、きっぱりと心に決めた。
 ところが、またまた予期せぬ事態が起きたのである。

「ねえ、まだ9時前だよ…」と遙が、甘えた声で茂にせまってきたのだ。びっくりした茂は ―マジかよ― という気持ちで遙を見つめた。すると、遙は身をくねらせて上目使いでじっと茂を見つめ返してくるのだ。
「えっ!……じゃあこれからどこか静かな所へ行く?」
「……」
 遙は小首を傾げ、下唇で上唇を噛みしめながら、潤んだ眼で笑いかける。
―なんだ、この女、何を考えているんだ?とんだ食わせ者かもしれないぞ― と茂は一瞬ひるんだ。しかし、面倒臭くなくていいや、とすぐ思い直したのである。
 茂は何もなかった顔で、海岸通りに向かって、と遙に指図した。そしてギアを入れる遙の左手の上に自分の右手を軽く載せた。11へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)
(写真は、喜多院にある天台宗の名僧天海の銅像。ゆかりの地全国至る所で見ることが出来る天海像。徳川家康の顧問的存在だったと言われ108歳の長寿だったことから、いろいろな伝説が残っている)

posted by hidamari at 11:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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