2006年07月23日

高層ビル


高層ビル.jpg11
 茂は六島に赴任して半年にもならないが、仕事柄島内は概ね把握していた。
 西海国立公園の1角を成す六島は海と山のコラボレーションの美しい所だ。特に湾に面する海岸は、沖縄に勝るとも劣らないきれいなベージュ色の砂浜があり、夏は海水浴に最適なのだ。良好な釣り場も点在しており、釣り客も全国から訪れている。
 島の内部には火山で出来たなだらかな芝生の山もある。
 しかし、大自然に恵まれたこの地にも奥まった所へ行くと、ラブホテルはあった。
 茂は、環境保護という立場で、何処にどういうラブホテルがあるか、よく分かっていた。
 茂が遙の車を向かわせた所は、海岸通りを過ぎて奥まった山の中にあった。
 そこはまるで小さなお伽の国のようだった。入口にゲートがありそこだけは電光表示板が派手に点滅しているので、そこがラブホテルだということは1目で分かった。
 遙は、ハンドルを握りしめ、何これ、私こんなつもりで来たのではないから、と驚いたように言った。まんざら、演技でもないようだ。ホントにドギマギしている。こんな所にラブホテルがあると、普通は分からないのが当然だった。昼間は電光表示板もつい見逃してしまうだろう。
「わたし、ここにホテルがあるなんて知らなかったから」
「そう、じゃあ、何処に行くと思ったの?」
「…そ、それは…どこか海にでも行くのかと…」
 茂は、何だそうだったのかと、ある意味ほっとした。
「ごめん、それならこれから海へ行く?」とあっさり引き下がった。茂にとって異存はなかったのだ。自分が今ベストコンディションでもないことは分かっている。飲めないビールを飲んだことで今になって眠くてたまらないのだ。12へ

(写真は、さいたま新都心のビル群。浦和と大宮の中程に位置するローカル的なこの地に、一際、高層ビルが突出しているので、箱庭のように馴染んでいない気がした)

posted by hidamari at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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