2006年07月31日

蔵造りの家


蔵造りの家.jpg15
 努めて明るく楽しげに振舞っている遙だったが、実は、彼女の心は空しかったのである。
 ホテル代5,200円を自分が払ったことなのか、茂がそれに対して当たり前のような態度だったからなのか、それとも、茂がソファーで居眠りしたことなのか、初めてのキスが、思っていたのと違って全く味気なかったことなのか。
 どれもむかついているようで、そんなことはみな許せるようで……。
 しかし、何か胸につかえていて、その何かがあまりよく分からなかった。
 
 それから1週間、遙は茂に自分から連絡する気が起こらなかった。きっと、茂から電話があると思ったこともある。それに最悪、1週間すれば、ダンス教室で会うことが出来るという安心感があった。
 しかし、一向に茂から連絡は入らなかったし、待ちに待ったダンス教室に茂は現われなかった。
 遙は、とたんに気が気ではなくなった。
 ダンス教室を終えると、マロニエに直行した。もしかしたら会えるかもしれない、と思ったからだ。
 30分待っても現れる様子がない。そうなると、どんどん不安に陥っていく。電話してみる。電源が切られている。メールを入れる。
 もっと早く連絡しておけばよかった、と後悔したが後の祭りだった。その日はとうとうメールの返事は来なかったのである。
 遙のストレスはどんどん膨れ上がった。茂の存在は、既に自分になくてはならないものだと、認識せざるをえなかった。一刻も早く茂に会いたいと思った。16へ

(写真は小江戸川越の蔵造りの家。道路がアスファルトでなかったら、江戸時代にタイムスリップしたような町並みだった)

posted by hidamari at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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