2006年08月10日

小僧さん人形


小僧さんの人形.jpg20
 現場を歩くことが多い茂は、公務員とはいっても帰宅時間はまちまちである。
 遙がマロニエで待っていることは分かっていた。
 しかし、茂は通常通りを崩す気持ちはない。
 事務所に戻ったのは6時を過ぎていた。茂はデスクで残務整理をするべき足早に駆け込んだ。茂のデスクがあるこの県のビルは1階は県民と直接触れる福祉や税務関係のフロアーになっている。この時間になるとカーテンが締められ、中で多少職員が残っていてもシーンと静まりかえっている。
 その1階ロビーのソファーに、5〜6才と思われる男の子が、足をブラブラさせて座っていた。
 茂は、あれっ、と思った。
「坊や、誰かを待ってるのか」と声をかけた。
「うん、ママ」
「ママはどこに?」
「ええーと、……あっち」と階段を指した。
「ママ、君がここに居ること、知っているの?」
「うん、ここで待ってろって言われたの」
 茂は、坊ちゃん刈りした元気そうなこの子供の顔に見覚えがあった。というより、総務課の保坂みどりの子供に違いないと思った。雰囲気がどことなくよく似ているのだ。
「名前は?」
「ほさかしょうた」
「しょうた君か…ジュース飲むか?」
「うん、…でもいい」
 茂は、親戚の子供は別として、本来、子供にあまり興味はない。自分から声をかけるなど考えられないことだった。誰もいないロビーだったこともあるが、何かほっとけないものがあったのだ。
 自動販売機からリンゴジュースを取り出すと、
「いいからこれ飲んで待ってろ。ママにちゃんと言っとくから心配すんな」と、翔太のかわいい手にジュースを渡した。
「ありがとう」
 翔太はペコンと頭を下げた。21へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)
(写真は、喜多院のみやげ品売り場で購入したもの。10cm足らずの小さなかわいい人形である)

posted by hidamari at 13:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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