2006年08月12日

托鉢人形


托鉢人形.jpg21
 総務課は2階にある。
 ただいま、と言いながら部屋の中に入った茂を、「お疲れさま」とみどりが笑顔で迎えてくれた。
 総務課の中に、総務、管理、経理、振興という係りがある。総務から一番離れた奥のブロックにある経理係で、男子職員が3人残業していた。その3人が茂に気が付き「お疲れさん」と次々に声をかけてくれる。
 挨拶するのももどかしく、彼らにペコペコと頭を下げると、
「あの、保坂さん、息子さんロビーで待ちくたびれていましたよ。ここに呼んだらいいのに」と、詰め寄った。
 みどりは一瞬、困惑した様子をした。
「…他に仕事しておられる方がいるし、いいんです」
「いいじゃないですか、時間外だし」
「いいの、わたしの仕事ももうすぐ終るから。明日、県議会議員さん達が急に視察に来られるんですって、資料作りを係長に頼まれちゃったの。今日に限って夫が出張中なのよ、困ちゃって、保育園からここへ連れて来ちゃった。すみません、迷惑かけて」
「いや、迷惑じゃないけど」
 茂は、自分がいろいろ言うことで、またみどりの仕事の妨げになると思った。
 自分の仕事をさっとかたづけた。
 挨拶もそこそこに、茂はロビーへ駆け下りた。
 一刻も早く翔太の所へ行ってやりたかった。
 遙のことが頭に浮かんだ。
 遙は大人だ。待っててくれるだろう。翔太はまだ小さい。かわいそうだった。でも俺、こんなに子供好きか?
 翔太はリンゴジュースのペットボトルを持ったまま、こっくりこっくり船を漕いでいた。
 いじらしくて、愛おしかった。22へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)
(写真は、喜多院のみやげ品売り場で購入した人形。みやげ品を買うのが大好きです。安いと同じような物をいくつも買ってしまう)

posted by hidamari at 17:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック