2006年08月22日

小説・喫茶店

26
 遙は週1回のダンス教室を楽しみにしていた。ダンスの腕前がメキメキ上達していたこともある。若くてスタイルがいい遙は、今では教室の広告塔のような存在だった。
 そんな遙にとって、茂が最近この教室に顔を出さなくなっているのが、重大な不安の種だった。
 それでも、当初の頃の茂は、教室のある火曜日にはダンスにこそ来なかったが、遅くなってもマロニエには顔を出していた。
 そんな日は2人は食事をし、夜の海へ行ったり、島に一軒ある映画館へ映画を観に行ったりして、それなりのデートを楽しんでいた。
 その間、遙は何度となく、「日曜日に家へ遊びに来て?母も会いたがってるから」と誘っている。その度に、用事があるからとはぐらかされ続けて来た。
 遙には煮え切らない茂の態度がとても腹立たしかったが、そのことを問い詰めれば2人の仲が簡単に終ってしまいそうで恐かったのだ。怒ることは出来なかった。
 そして茂は、徐々に火曜日にマロニエにも顔を出さなくなる日が多くなった。
 遙は、そんな時、私はきっと遊ばれているんだ、と思った。思わざるを得なかった。
 胸の中はキリキリと痛み地団駄を踏む思いだった。それでも怒れないのは、このまま会えなくなるのが、遙には一番辛いことだった。
 茂から、別れよう、と言われた訳ではない。
 じっと我慢して、茂がこっちを向いてくれるように仕向けるしかないように思えた。
 もうすぐ、クリスマスというのに、遙は砂をかむような思いの毎日を送っていた。
 ただ1つ救われるのは、昼間接する元気な子供たちの笑顔だった。27へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)
posted by hidamari at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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