2006年09月03日

小説・喫茶店

32
「今付き合っている彼女、六島の人なんだ。ここに赴任してからだから、まだ半年くらいかな」
「やっぱ役所関係の人?」
「いや、ダンス教室で知り合ったの。小学校の先生」
「あら、ステキじゃない!どんな人?」
「どんな人って、普通だよ。まあ、スタイルはいい。それに美人だろうな」
「ふうん。…1つ聞いていい?」
「小久保さんさあ、こんなにハンサムなんだもの、六島に来るまでは彼女いなかったの?」
「いたよ。でも転勤が決った時、別れた」
「あら、そんなもん」
「うん、そんなもん。今の彼女だってそうだよ。六島を出る時は別れることになると思う」
「ああー、…偉いね、プラトニックな交際なんだ」
「いや、違うよ。今の女性はそんなうぶじゃないよ。時々男の方が戸惑うほどそっちの方は積極的だし…。それに僕が今付き合ってる彼女、その方が好きみたい。僕が求めると、口では、イヤだ、そんな軽い女じゃないようなこと言うんだ。その割りには、車にはいつもシートとタオルケットを積んでいて、いざという時はそれを用意するんだ」
「いざという時って?」
「ほら、海岸なんかでデートしていて、気分がお互い盛り上がってそういうことになるだろう?そんな時」
 みどりは、唖然としていた。ここまであからさまに話してくれなくても、と思ったのだ。茂の彼女が気の毒だった。男って、こんなことまで誰彼かまわず話すのだろうか。特にクールで紳士的だとばかり思っていた茂が…。
「ねえ、小久保さんのこと無口だとばかり思っていたのに、そんなことまで話すなんて」
「そうぉ?保坂さんが身内のような気がして自然に喋れちゃうんじゃないかなあ」
「びっくりよ、こんな言われようじゃ彼女が気の毒よ」
「保坂さん、年上でしょ!それに結婚しているし、気を許してるんだ」
 比較的広い風呂敷を敷いた上に2人は少し間を置いて座っていた。
 小さな声で夢中になり話しているうち、いつの間にかぴったり寄り添った形になっていた。
 みどりは、はっと気がつき、分からないように茂から身体を少しずつ離していった。33へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)
posted by hidamari at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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