2006年09月19日

小説・喫茶店

40
 ダンスパーティーは10時をもって終了した。スタッフにより、直ぐ様テーブルとソファーが、元通りにセットされた。
 そこでまた居坐って飲んでいる人もいたようだった。
 茂と遙はダンスですっかりエネルギーを使い果たしていた。どちらから言い出すでもなく当たり前のように2人はキャバレーを後にした。
 外はさすがに寒かったが、冷たい空気が却って心地良かった。
「これからどうする?」茂は予定を決めていなかった。ホントのところは踊り疲れの上、少し飲んだウイスキーの水割りが効いたのか眠くて仕方がなかった。しかし遙が楽しみにしていたイブをこのまま帰していいものか迷っていた。彼女に決めてもらうしかなかった。
「疲れたんでしょう?」遙は察したように応えた。
「うん、まあね」茂は素直に言った。
「帰りたいんでしょ?」
「そんなことはないけど」
「わたし、小久保さんのマンションに行ってもいいよ」
「えっ、それは…」
「じょうだんよ。……今夜は帰る」
 遙は茂が眠そうにしているのが分かっていた。でももしかしたら、今夜こそマンションへ連れて行ってくれるかもしれないといちるの望みをかけていた。それで思い切って自分から言ってみたのだ。でもやっぱりダメだった。
「じゃあ、明日また電話する」と遙は何でもないように明るく言った。実際、遙の方も十分疲れていたので、半分は早く家に帰りたい気持ちがあったのだ。
「今日は楽しかったよ。俺、月曜日から本所へ出張なんだ。そのまま御用納めでそのあと宮崎の実家へ帰ってお正月を迎える。明日あさってまでこっちに居るから」
「そうなんだ」遙はとたんに目が覚めた感じだった。急に寂しさと憤りが押し寄せてきた。
「じゃあ明日絶対会ってね」と思わず強い口調で言っていた。41へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)
posted by hidamari at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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