2006年09月21日

小説・喫茶店

41
 せっかく楽しかったクリスマスイブなのに最後に遙をイライラさせてしまった。
 茂はその原因が自分にあることは分かっている。申訳ないと思ってもどうすることも出来ないのだ。
 たとえ長い間会えなくてもお互いに思いやる心が通じていれば、遙はもっと穏やかに生活が出来るだろう。遙の自分に対する強い愛情は痛いほど感じている。ただ、茂自身が遙を思う気持ちがそれ程強くないのはどうすることも出来ないのだ。
 遙は美人で、頭もいい。気配りも出来るし、頑張り屋でもある。女性としてケチのつけようがないほどなのだ。肌を合わせることも度々だが、その刹那は間違いなくとてもハッピーである。
 ただ、離れたくないとか、また会いたいとか、自分のことを何もかもさらけ出していいとか思う気持ちが全く湧かないのが正直なところだった。心のどこかにいつもバリケードを張ったところがあるのだ。
 遙は敏感にそれを感じ取っているのだろう。
 遙はまた、海の側で荒くれな漁師の世界で育ったせいか、とても大らかな性格なのだが、困ったことに普段でも大声で喋る癖がある。茂はそれを生理的にどうしても受け入れることが出来ない。
 しかしそれだけではない。人間が奥深くに持っている機微みたいなものが、余りにもかけ離れ過ぎているような気がするのである。
 一生を共に出来る相手ではないことは最初から茂には分かっていた。42へ

(上記小説は、カテゴリー短編小説〔喫茶店〕で連載中)

posted by hidamari at 14:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説〔喫茶店〕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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